コイル(インダクタ)
コイルの別名はインダクタであり、どちらで呼んでも同じものを指す。さらに使用用途により詳細な名前(チョークコイル等)がつく。
コイルの電気回路での記号は以下。
コイルに関連する用語
- L:(自己)インダクタンス[H]・・・
- コイルが発生させる誘導起電力の大きさに関わる値で、L=\(\large{\frac{μN^2S}{l}}\)
- コイルの中に入れる鉄心の透磁率μが高く、コイルの巻き数Nが多く、長さlが長く、断面積Sが大きいと上昇し、電磁誘導での誘導起電力Vの大きさに比例する。(長さlは分母にいるけど、分子のNは、単位長さあたりの巻き数[回/m]をnとすればN=nlで表され、それが2乗になってるので、長さが長いほうがLは高くなる)
- コイルに電流を流した時に発生する全磁束(右ネジ)は、Φ=LI。Iは電流で、磁束は電流の大きさに比例する。
- M:相互インダクタンス[H]・・・
- 一次コイルが二次コイルに発生させる誘導起電力の大きさに関わる値で、M=\(\large{\frac{μN_1N_2S}{l}}\)
- M=k\(\sqrt{L_1L_2}\)(kは結合係数で1の時に漏れ磁束なし)
- V:誘導起電力[V]・・・
- 電磁誘導でコイルに生じる誘導起電力Vは、自己インダクタンスLに電流Iの時間変化をかけて、
V=-L\(\large{\frac{dI}{dt}}\)[V]
で表せる。 - コイルは直流はよく流れる(スイッチのオンオフの瞬間を除く)が、交流はレンツの法則で電磁誘導で逆向きの誘導起電力が発生するため、流れにくい
- 電磁誘導でコイルに生じる誘導起電力Vは、自己インダクタンスLに電流Iの時間変化をかけて、
- XL:誘導性リアクタンス[Ω]・・・XL=jωL
- W:コイルの蓄えるエネルギー・・・
- コイルは電気エネルギーを磁気エネルギーとして蓄える。W=\(\large{\frac{1}{2}}\)LI2[J]
- 直流回路においてはスイッチを切った瞬間に電流が流れるのがまさに磁気エネルギーの放出である。
- R:コイルの導線抵抗・・・
- コイルの導体(導線)としての抵抗値Rは、R=ρ\(\large{\frac{l}{S}}\)で表せる。(ρは抵抗率[Ω*m]、lは長さ[m]、Sは断面積[mm2])
- C:コイルの持つ静電容量・・・
- 静電容量はコイルの巻き線の線間容量である。
- Q値:コイルのQuality Factor(品質)を表す係数・・・
- リアクタンスXLと抵抗Rの比がQ値。Q=\(\large{\frac{2πfL}{R}}\)。Q値の逆数が損失係数。
- Q値が高いということはリアクタンスが高いということで、2πfが高い=周波数が高い=高周波領域でも許容値をオーバーせずに使用できるという事。Qが低いとコイルの抵抗としての機能が低いという事
コイルと直流・交流
コイルは直流は通すが、交流は自己インダクタンスのせいで通しにくい。そして周波数が上がると自己インダクタンスが上がるので、より通しにくくなる特性がある。これがコイルが高周波数の電流を通さず、低周波数の電流はやや通す理由となっている。
コイルに直流を流した時、スイッチを入れた瞬間と、スイッチをオフにした瞬間のみ、電流の変化が起こるので、逆向きの誘導起電力の影響を受ける。
スイッチを入れた瞬間は、電流が一気にMAXまで上がらず、緩やかに上がっていく。スイッチをオフにした瞬間は、電流が一気に0にならず、緩やかに下がる。
コイルに交流を流すと、交流のインピーダンスのページでの説明にあるように、電流の変化が最大の時(電流が0の時)に誘導起電力(電圧)が最大or最小となり、電流の変化が0(電流が最大)の時に電圧が0となる。(波形はコンデンサを反転させたもの)
これはコイルによる起電力を基準にすれば、電流の位相が90°遅れることを意味する。
ちなみに、コイルにかかる電圧は、導線の抵抗などを無視すれば、誘導起電力に等しい。
交流の場合、電流の変化が高い=誘導性リアクタンス高い=周波数が高いほど誘導起電力は大きくなる。
コイルの等価回路
コイルはインダクタンスとしての抵抗成分とは他に、導線の抵抗R、静電容量(浮遊容量)Cを持っている。
流れる電流の周波数を高くしていくと、共振周波数になった時、静電容量による自己共振作用が起こり、インピーダンスは抵抗Rのみとなり、それ以降の周波数ではコイルとしての機能がなくなり(電流は低下せず)、インピーダンスはコンデンサとしての影響を受けて、容量性リアクタンスが低下し、電流が増加する。
また、蓄えられる磁気エネルギーの許容値を超える電流(磁気飽和許容電流)が流れると、インダクタンスは逆に減少していくため、電流が増加する。
(詳しくはパナソニックのページ参照。かなりよくまとまってる。)
チョークコイル
チョークコイルとは、交流をチョーク(阻止)し、直流を通すという意味からきている。
高周波の電流が来ると、コイルの誘導性リアクタンスが上昇し、電流が通りにくくなるため、高周波の信号を通さないで、低周波と直流のみ通すことでノイズを阻止したりする。これを高周波チョークコイルという。
交流を整流するのに用いる低周波チョークコイル(平滑コイル)がある。
平滑回路では、交流電流は、ダイオードで脈流となった後、チョークコイルを通れず、コンデンサへ回され、そこで直流へ平滑(電圧をならされ)され、コイルを通過する。