力率とは?
複素数平面で合成電圧ベクトルV0の抵抗Rのベクトル(電流の位相と同じ)となす角をθとする。
RLC直列回路において、電流Iは抵抗Rの位相(角度=ωt)に等しいので、抵抗、コンデンサ、コイル全てに電流の位相を掛けても、4つのベクトルの長さが電流の最大値I0倍されて、この4つのベクトルの配置がかわらない状態でωtが増えていくだけである。
つまり、この4つのベクトル同士が互いになす角度は不変なため、電圧V×電流I=電力P[W=J/s]も、電圧やインピーダンスと同じベクトルの向きとなり、合成電力は抵抗、コイル、コンデンサの電力のベクトル和となる。
そして、V0×I0のことを皮相電力P0といい、P0cosθを有効電力、P0sinθを無効電力という。
図を見ればわかる通り、P0cosθは抵抗Rにかかる電圧VRに等しく、P0sinθはリアクタンスにかかる電圧VLCに等しい。
このθのことを力率と呼ぶ。
コンデンサとコイルは1周期で見ると、電圧と電流の位相のズレのせいで、電力の合計が0となり仕事をしないので、無効電力の構成成分となる。
力率θを0にするには、コイルも、コンデンサもない回路か、コイルとコンデンサの電圧が等しく位相差を打ち消せる場合、すなわち、角周波数ω=\(\large{\frac{1}{\sqrt{LC}}}\)で、周波数f=\(\large{\frac{1}{2π\sqrt{LC}}}\)の時である。
この時、の周波数を共振周波数といい、電力を熱エネルギーに変換する抵抗成分=有効電力成分のみとなり、最も電力効率がいいとされる。
実際に電力量計で測られていて、電力会社の請求額に関与するのは有効電力なので、消費者にとっては力率の低い電気機器を使っても影響はないが、電力会社にとっては、無効電力の分大きな電力の通り道(電線の太さなど)を作らなければならず、経費的なところでデメリットが生まれる。
損失とは?
一方、損失とは銅損、鉄損、機械損失に大別される。
銅損はコイルの電気抵抗、鉄損はコイルの鉄心のヒステリシス損失と渦電流損失の合計、機械損失は回転によって発生する摩擦による。
ヒステリシス損失とは、磁性体にかかる磁場強度(H)を+や-に変化させていくと、それに準じて磁束密度が+~-に変化するが、元の軌跡をたどらず、磁場強度が0でも磁束密度が残る状態になるなど、その磁性体独自のヒステリシスループという曲線を描く。
一般的にコイルの鉄心に使われるケイ素鋼等は軟磁性体で、ヒステリシスループで囲まれる面積が小さい。この面積が大きいと、ヒステリシスの動きに消費するエネルギーが熱として損失に計上される。
鉄心は損失を防止するため、薄い板を何層にも重ねた積層構造にすることで、渦電流損失を抑えられる。渦電流も熱として損失計上される。
電線で発生するジュール熱は電流2乗×抵抗×時間tで求められる。ジュール熱がロスとなる。流す電流が大きくなるほどロスは大きくなる。
同じ電力を送る場合、電力=電流×電圧なので、ロスを少なくするために電流を下げたいなら、電圧を上げる必要があるので、高電圧で送電している。